公開日:2026年10月26日
先日、勤め先の社長から「こんなに設備投資したら、うちの損益やばいだろ」と言われました。
私は本社部門で数字を扱う仕事をしています。結論から言うと、大きな機械を買っても、その年に買った金額がまるごと赤字になるわけではありません。それを説明する資料を作るのに、丸1日かかりました。正直に言うと、悔しい1日でした。
このときに整理した「お金(キャッシュ)と損益は別もの」という話は、会社だけでなく、個人の家計や投資にもそのまま使えます。数字に慣れていない人向けに、できるだけかんたんにまとめます。
結論
・設備を買うと、お金は買ったときに一気に出ていく
・でも損益(もうけの計算)には、減価償却費として何年かに分けて少しずつ出る
・例:5,000万円の機械を10年使うなら、損益に出るのは1年あたり約500万円
お金と損益は別もの
会社の数字には、大きく2つの見方があります。
| キャッシュ(お金の出入り) | 損益(もうけの計算) | |
|---|---|---|
| 見ているもの | 口座のお金が増えたか減ったか | その年にいくらもうかったか |
| 機械を買った年 | 買った金額が全部減る | 何分の1かだけ費用になる |
| 次の年から | 減らない(もう払い終わっている) | 毎年少しずつ費用になる |
機械は何年も使います。だから会計では、買った金額を使う年数(耐用年数)に分けて、少しずつ費用にします。この毎年の費用が減価償却費です。
たとえるなら、10万円のスーツを買っても「今月の生活費は10万円」とは考えず、「何年か着る分の費用」として考えるのと同じです。
5,000万円の機械を買ったら、損益にはいくら出る?
ここからは例の数字です(実際の勤め先の数字ではありません)。わかりやすくするために、毎年同じ額を費用にする定額法で計算します。
- 5,000万円の機械を、年度のはじめに買った
- 耐用年数は10年、計算方法は定額法
| 年度 | お金の支出 | 損益に出る減価償却費 |
|---|---|---|
| 1年目 | 5,000万円 | 500万円 |
| 2年目 | 0円 | 500万円 |
| 3年目 | 0円 | 500万円 |
| …… | 0円 | 毎年500万円 |
| 10年目 | 0円 | 500万円(10年で合計5,000万円) |
1年目は、お金は5,000万円出ていきますが、損益に出るのは500万円。お金の1割です。「5,000万円の赤字」にはなりません。
実際には、年度の途中で買えば1年目は月割りになったり、計算方法によって年ごとの金額が変わったりします。「損益に出る額は年によって違う」ので、何年分か先まで計算しておくのがおすすめです。
説明の資料で工夫したこと
資料は、何度か作り直しました。
- 最初は「減価償却費の推移」だけの表にしました。でもこれだと「償却費がどんどん増える=やっぱり損益がやばい」と、逆の印象になりかねません
- そこで、「設備投資の額(お金)」と「減価償却費(損益)」を横に並べる形にしました
- さらに、損益の側に昔買った設備の償却費が混ざっていると比べにくいので、「前の年までに買った分」と「今年買った分」に分けました
- 最後に、1枚で読める要約にして、「今年は大きなお金が出ていくけど、今年の損益への影響はその一部」と1行で言えるようにしました
過去の決算の明細から、資産ごとの償却費を1円単位で抜き出して、計算が決算と合うかも確かめました。ここが一番時間がかかったところです。
気をつけたいこと
- 定額法と定率法:定額法は毎年同じ額、定率法は最初が多くてだんだん減る。建物は定額法、機械などは定率法を選べることが多い
- 損益に出るのは償却費だけではない:設備にかかる固定資産税(償却資産税)、保険料、保守費、古い設備の撤去費、お金を借りて買ったなら利息なども出る
- 10万円以上20万円未満のものは、耐用年数に関係なく3年で3分の1ずつ費用にできる(一括償却資産)
- 会社のソフトウェアは、自社で使うものなら耐用年数5年
- 百万円単位に四捨五入した表は、内訳を足しても合計と合わないことがある。決算書でも「四捨五入のため合計が一致しない場合がある」と書くのが一般的
個人のお金にも使える考え方
- 大きな買い物:家電や車も、「支払った金額」と「何年使う分か」を分けて考えると、高いか安いかを判断しやすい。10年使う20万円の家電は、1年あたり2万円
- 不動産投資:お金は買ったときに出ていくが、経費は耐用年数で分けて出る。同じ考え方
- 株の決算を読むとき:設備投資が多い会社は、利益より先にお金が減る。利益が出ていても、手元のお金が減っていることがある。キャッシュフロー計算書も一緒に見る
ポイ娘のひとこと:丸1日かかった資料でしたが、作り直すたびに、どう見せれば伝わるかを考えることになりました。説明する側に回ったことで、私自身の理解も深まりました。
まとめ
- 設備を買うと、お金は一気に出ていくが、損益には減価償却費として何年かに分けて出る
- 例:5,000万円の機械を10年使うなら、損益に出るのは1年あたり500万円
- 償却費以外のコストもある。何年分か先まで計算しておくと安心
- 「お金」と「損益」を分けて考えるのは、家計や投資にも使える
※記事の数字はすべて例です。会計処理や税金の扱いは会社や資産によって違うので、実際の判断は専門家や公式の情報で確認してください。